ウクライナ出身・安青錦関が歩んだ相撲道とは？恩人との絆と異国で掴んだ夢！

ウクライナから日本へ戦火を逃れたひとりの青年が、大相撲という異文化の舞台で頂点を目指す物語をご存じでしょうか？ 関西大学相撲部との運命の出会いから始まり、異国の地で力士として花開いた安青錦新大（あおにしき・あらた）関。 この記事では、彼の相撲人生と深い人間関係、成長の軌跡をたどりながら、スポーツが持つ力と人の縁の奇跡を掘り下げます。

安青錦関の原点：ウクライナと相撲の接点

少年時代から抱いた「日本で相撲をしたい」夢

安青錦関（本名：ダニーロ・ヤブグシシン）は、ウクライナ西部の都市ヴィネンツャ出身。 幼少期から相撲に魅了され、現地のジュニア相撲大会に参加して経験を積んできました。 12歳のときには「いつか日本で力士になりたい」と語っていたといいます。

世界ジュニア選手権での出会いがすべてを変えた

2019年、堺市で開催された世界ジュニア相撲選手権大会に出場した15歳の安青錦関。 その場で関西大学相撲部の山中新大さんと出会い、「ハロー」の一言が未来をつなぐ糸口となりました。 帰国後もSNSを通じて交流が続き、彼の夢はより現実味を帯びていきます。

戦争とともに閉ざされた道、そして来日へ

2022年、ロシアの侵攻によりウクライナは戦火に包まれます。 練習どころか日常生活すらままならなくなったなか、安青錦関は山中さんを頼って日本への避難を決意。 18歳になると出国できなくなるルールの直前、彼は命がけで日本への旅に踏み出しました。

関西大学相撲部と山中新大氏の支え

「家族」として迎えたホームステイ生活

日本に到着した彼を迎えたのは、山中新大さんの実家でした。 山中さんの家族も全面的に受け入れ、言語も文化も異なる環境に安心して溶け込めるように支えました。 この時点で2人の間には、単なる友人を超えた兄弟のような信頼関係が生まれていたのです。

練習生として相撲部に参加、頭角を現す

日本語学校に通いながら、関西大学相撲部の練習にも参加。 当初から部員たちを圧倒するほどのフィジカルと技術を見せ、指導陣もその潜在力に驚きを隠せなかったといいます。 戦争を経ても、相撲にかける情熱は少しも失われていなかったのです。

「新大」をしこ名に込めた恩義と決意

安青錦関のしこ名「新大（あらた）」は、恩人である山中新大さんの名前から取りました。 これは「支えてくれた人の存在を一生忘れない」という強い想いを形にしたもの。 その名を背負って土俵に立つ彼の姿は、まさに義と絆の象徴といえるでしょう。

安治川部屋入門と快進撃の記録

2023年に初土俵、序ノ口から無敗街道

2023年、安青錦関は安治川部屋に入門し、プロとして初土俵を踏みます。 序ノ口・序二段で連続優勝を果たし、各段を駆け上がるスピードは異例中の異例。 土俵上での冷静さと闘志が、相撲ファンの心を掴みました。

特徴は“低さ”と“前に出る”攻撃的な相撲

身長180cm、体重136kgという恵まれた体格ながらも、低い立ち合いと前への圧力が彼の武器。 特に、立ち合いでの一気の押し出しは「外国人力士らしからぬ日本的な相撲」とも評されています。 レスリング経験もある彼の体幹の強さが、その技に生かされています。

2025年春場所で幕内昇進、そして初優勝

初土俵からわずか9場所で幕内に昇進し、2025年九州場所では優勝決定戦で横綱・豊昇龍を破って優勝。 これは外国出身力士としても異例の快挙であり、スピード出世の象徴として一躍時の人となりました。

国境を越えた友情が生んだ奇跡の物語

スポーツが命を救う“セーフティネット”になった

ウクライナでの生活が絶たれたとき、相撲という競技が彼に生きる道を与えました。 これは単なる競技者育成ではなく、人道支援や社会的包摂としてのスポーツの力を示す象徴的な事例です。

異国文化への適応と日本社会との架け橋

安青錦関は礼儀や周囲への感謝を忘れず、日本人以上に日本的なふるまいで知られています。 それが日本相撲協会内でも高く評価され、相撲文化の担い手としての期待も高まっています。

関西大学の誇りとして輝く存在に

春場所で披露された化粧まわしには、関西大学の校章が堂々とあしらわれていました。 関西大学相撲部からの贈り物であり、「この大学が彼を育てた」という誇りの証です。

未来への展望と次世代へのメッセージ

夢を諦めない姿勢が道を開く

「夢を語り、行動すること」。それが安青錦関の生き様から学べる最大の教訓です。 不可能と思える環境でも、支え合いや勇気があれば道は開けることを証明しています。

日本の相撲文化に新たな息吹を

安青錦関の活躍は、相撲という伝統競技がグローバルな価値を持つことを示しました。 外国出身力士でありながら、文化を尊重し順応する姿は、日本人ファンからも熱い支持を集めています。

次代の国際的力士への希望の星

彼の成功は、戦争や困難を抱える国の若者にとっても大きな希望となっています。 「日本で相撲をしたい」「夢を叶えたい」という願いに応える道が、ここに一つ示されたのです。

まとめ

ウクライナから日本へ渡り、大相撲の世界で頂点を目指す安青錦関の物語は、スポーツと人間関係が生み出す奇跡の連続です。 戦争の混乱の中でも夢を諦めず、恩人との絆を胸に、努力を重ねて結果を出す姿は、多くの人に勇気と感動を与えています。 今後の土俵でも、彼は“異国の星”ではなく、“日本の相撲を愛するひとりの力士”として輝き続けるでしょう。